仕事から離れて読む一冊。死神の浮力(伊坂幸太郎)  感想

伊坂幸太郎著作。死神の精度に続く第二作。
今回は短編集ではなく、1冊丸々長編である。
非常におすすめ。
すっきりとした読後感を味わえるサラリーマン向けの小説。

 

タイトルにある通り主人公は死神である。
死神と言えば、モモであったりデュオであったりリュークであったり、猫を連れ鎌を持ち、終いには飛んだりするイメージであるが、本作の千葉さんはそれに比べてよっぽど人間らしい。
人間と同じ道路を歩き、魔法は使えず、喫茶店で音楽を聴きながら時間をつぶす。
そして何しろ、仕事をしている。
仕事とはどういうものかを語り、憂いたりもする。

 

伊坂幸太郎の著作は好きで良く読ませていただいている。
グラスホッパーゴールデンスランバー、チルドレンのようにバラバラだったストーリーが最終的なクライマックスに向けて一つずつ繋がりが明らかになってゆく流れを楽しみに読み始める事が多いが、結果読んでみると、個性的なキャラクターに惹きつけられ読み進めていることも多い。

 

本作はまさにそれ。
何があっても動じず、殴られても蹴られても筆舌に尽くしがたい拷問を受けても
「あー音楽聞きてー」ぐらいにしか思っていない千葉さんが正直ラッキーと無敵体質で
難なく困難を潜り抜けてゆく姿は頼もしい。

これほどまでに恵まれたスキルの持ち主だが、少しずれた独特な雰囲気の会話、行動が
キャラクターにより魅力的にしている。

膨大な仕事や勉強に疲れた人に是非とも気分転換に読んでいただきたい一冊。

ちょっとしたヒーローが見つかるかもしれません。